キューピーのたらたら日記

日々、老後を楽しんで過ごしています。

『海辺のカフカ』 村上春樹


まずは、生涯に村上春樹の代表作を2度

読み通すことができたことを祝したい。

僕は、この『海辺のカフカ』が最高傑作だと思っている。

1Q84』もよくできた小説だったが、

ちょっとスノビッシュに流されてしまった。


主人公は村上春樹の分身と言っていいだろう。

15歳の少年。

世界で一番タフになろうとしている少年。

村上春樹らしい。

そうか、タフになることが氏の命題だったのか。


主人公は彫刻家の父との二人暮らし。

母は姉を連れて家を出てしまっている。

主人公は母の顔さえ思い出すことができない。


いなくなった母を追い求めるのが

この小説のメインになってる。

15歳の少年だったら、

将来、自分は何になったらいいんだろう?

自分には何の才能があるんだろう?

どう生きていったらいいんだろう?

ってことがメインであるべきはずなのに

この主人公は違う。


そこが村上春樹なんだ。

母性の希薄さ、、、、、


氏はエッセイの中で、

自分はひどい偏食で、肉は牛しか食べない。

中華料理は食べない。

ラーメンが大嫌い。

と書いていた。


子供の好き嫌いをなくし、

少しでも世の中に適応できるように

しつけをするのが親の役目。

村上春樹には、豚肉を美味しく料理して

食べさせてくれる母親がいなかったのだ。


どおりで。

母性の不在の二点目。

嫁を律してくれる母親がいない。

だから、若い女は好き勝手。

いとも簡単に主人公に体を許す

いつものハルキワールド。

これでは、下半身の緩い女を嫁さんにして、

妻の浮気に泣かされる結婚生活を

送る羽目にもなる。



父親も描写されない。

この小説では、ただ殺されるためにだけ

登場する父親。

主人公との確執の記述が欠落していて、

洞察の機会がない。


伝統、両親から受け継いだものを排除したところに

新しい物語の世界を構築することに

ひとまず村上春樹は成功を収めた。

だが、氏が何を言っているか、

ということに関しては、

「浅い」としか言いようがない。

古の昔から脈々と流れている血脈を無視して

「僕」一代だけの経験でものを言ってるから

浅い。


今回の読書で、村上春樹に対する思いが変わった。

何より、聴かせ方が上手い。天才的。

読者を惹きつけてぐいぐいひっぱっていく技量において、

僕にとって村上春樹の右に出る者はいない。

だが、僕が得たのは一時的な「読む」という行為の快楽だけだった。