
怖ろしい小説を読んでしまった、
というのが率直な感想だ。
金原ひとみはあまりに過激だ。
過激というのが陳腐なら、
彼女の性器を切り刻むナイフは、
あまりにギザギザで残酷だ。
僕は、この小説を批評する言葉を持たない。
だが、ラストのアヤの言葉で心を整理した。
「もしかしたらあの赤ん坊は、
私なのかもしれない。」
無垢な魂を汚した代償は無限大だ。
そのことに対する金原ひとみの洞察は正確だ。
いや、もしかしたら経験知かもしれないが、
そこには立ち入らない。
アヤのルームシェア二スト、ホクトによって誘拐され、
幼児性虐待の生贄にされた、名前も明かされない赤ん坊の魂は、
もう救われない。
だが、赤ん坊の魂はアヤに乗り移ることによって、
懸命に救われようとしているのかも知れない。
その魂は、ヤリマンのアヤの中に潜在する、
ただ一人の男をひたすら愛し抜きたい、
という心を肥大させるが、
彼女が愛する村野さんは、決して彼女に心を開かない。
もう、アヤは未来永劫救われない。
自らを傷つけ、
ホクトを刺し、
同僚から刺され、
小動物を虐殺し、
男たちと愛のないセックスをし、
誰からも愛されずに
地獄でのたうちまわっているしかないのだ。
ブラックアウト